相続税・贈与税改正のポイント
相続税・贈与税は、平成27年(2015年)の大幅改正以降も段階的な見直しが続いています。特に令和5年度税制改正(令和6年1月1日施行)により、生前贈与や相続対策の考え方が大きく変わりました。
今回の改正は、「親世代の資産を、できるだけ早い段階で子や孫へ引き継ぐこと」を目的に、「生前贈与」と「相続」をより一体的に捉える方向へ進んでいます。
ポイント1:相続税の基礎控除は「引き下げられたまま」
平成27年の改正以降、相続税の基礎控除は現在も以下の水準が維持されています。相続税の基礎控除額 3,000万円 +( 600万円 × 法定相続人の人数 )
この改正により、相続税の課税対象者は年々増加しています。亡くなった方のうち相続税の申告が必要となった割合は、改正前の平成26年分では約4.4%でしたが、平成27年分には約8%に上昇し、令和6年分ではおおむね1割程度まで拡大しています。
「自宅と預貯金があるだけの一般的なご家庭でも、相続税がかかる時代」となっています。
ポイント2:相続税率は財産が多いほど段階的に高く
相続税は、財産の金額に応じて税率が段階的に上がる「累進課税」となっており、税率は10%から最高55%まで設定されています。【相続税の税率表(法定相続分に応じた取得金額ごと)】
| 法定相続分に応じた基礎控除 | 税率 | 控除額 |
| 1,000万円以下 | 10% | – |
| 1,000万円超 ~ 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超 ~ 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超 ~ 1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超 ~ 2億円以下 | 40% | 1700万円 |
| 2億円超 ~ 3億円以下 | 45% | 2700万円 |
| 3億円超 ~ 6億円以下 | 50% | 4200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7200万円 |
ポイント3:生前贈与の「持ち戻し期間」が7年に延長
令和5年度税制改正により、 暦年課税(年間110万円の非課税枠を利用する贈与)による生前贈与の相続税加算(持ち戻し)期間が見直されました。• 改正前: 相続開始前 3年以内 • 改正後: 相続開始前 7年以内(段階的に適用)
【100万円の緩和措置】 延長された4年間(相続開始前4年〜7年前)の贈与については、その合計額から100万円を差し引いた残額が相続財産に加算されます。このルールは令和6年1月1日以後の贈与から対象となり、令和13年(2031年)以降に亡くなった場合には、丸7年分が持ち戻しの対象となります。
これにより、生前贈与対策は「より早期・長期的」な視点で行うことが不可欠となりました。
ポイント4:暦年贈与(年間110万円枠)は引き続き利用可能
年間110万円までの非課税枠を利用する「暦年課税制度」は、従来どおり利用可能です。ただし、以下の2点に注意が必要です。
1. 相続開始前7年以内の贈与は、相続財産に持ち戻して計算する。
2. 一度「相続時精算課税制度」を選択すると、その贈与者からの贈与について暦年課税へ戻ることはできない。
ポイント5:相続時精算課税制度が大幅に使いやすく
相続時精算課税は、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与について選択できる制度です。今回の改正で利便性が飛躍的に向上しました。
【令和6年以降の新ルール】
• 年110万円の基礎控除が新設: 毎年の贈与額のうち110万円までは贈与税がかからず、申告も不要です。さらに、この基礎控除分は相続時に持ち戻す(加算する)必要がありません。
• 特別控除2,500万円: 基礎控除(110万円)を超えた分については、累計2,500万円まで贈与税がかからずに贈与できます(相続時に加算)。
これにより、同制度は「多額の一括贈与」だけでなく「毎年の計画的な贈与」にも活用できる制度へと進化しました。
ポイント6:もしもの災害時も安心「被災時の再評価」ルール
相続時精算課税制度には、「贈与した時点の価値」で将来の相続税を計算するというルールがあります。そのため、これまでは「贈与後に地震や火災で不動産の価値が下がっても、高い税金がかかる」というリスクがありました。
今回の改正により、贈与後に災害で被害を受けた土地・建物については、「被害によって下がった価値」を差し引いて相続税を計算できるようになりました。
万が一の時にも実態に合わせた公平な税負担で済むようになり、より安心して制度を利用できます。
ポイント7:教育資金の一括贈与 非課税制度の継続
直系尊属から30歳未満の子・孫への教育資金贈与は、最大1,500万円まで非課税となります。• 学校等への支払い: 最大1,500万円 • 学校外(塾・習い事等): 上限500万円 ※本制度は令和8年(2026年)3月31日までの期限付き制度です。
使途の制限や専用口座による管理など、一定の要件を満たす必要があります。
改正後の相続対策における留意点
• 暦年贈与は、持ち戻し期間延長により「早く始めること」のメリットがより大きくなりました。• 相続時精算課税は、110万円の基礎控除新設により、非常に有力な選択肢となりました。
• どちらの制度を選ぶべきかは、家族構成・資産状況・将来の見通し等によりご家族ごとに異なります。
• 安易な制度選択は、将来の税負担増につながる可能性があります。
まとめ|相続対策は専門的判断が不可欠です
令和5年度税制改正により、相続税・贈与税は大きな転換点を迎えました。特に「暦年贈与か、相続時精算課税か」の選択は、これまで以上に将来の税額を左右する極めて重要な検討事項です。
当税理士事務所では、最新の税制改正を踏まえた相続・贈与対策のご相談を承っております。
制度選択や生前対策についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
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